Vol.078(2007年12月16日〜31日)
アーティストが、街にやってきた。
美術人場海外
♣番組レポート
アーティスト・イン・レジデンスの為、来阪したVadim Vosters(ヴァディム・ボスタス)の作品制作の様子から展覧会までを取材。
ディレクション/撮影/編集:甲斐賢治
編集:野添貴恵
協力:大阪府立現代美術センター、有限会社八木アートマネジメント(アートコートギャラリー)
【関連リンク】
Vadim Vosters Official Site
http://www.vadimvosters.be
【番組制作レポート】
text by 野添貴恵(コネクタテレビスタッフ) on 2015.9.10
この番組は、2007年に大阪で滞在制作をしていたヴァディム・ボスタスを取材したものです。現在、番組は公開されていないので、どんな番組であったか簡単に紹介したいと思います。
ヴァディム・ボスタスは、ドローイングの上に写真をオーバーラップさせて投影し、虚像と実像との狭間にある風景を見せる作品などでヨーロッパを中心に活動しているアーティストで、大阪府が主催する芸術家交流事業「ART-EX」の第18回招聘作家として、ベルギーのブリュッセルより2007年8月に来阪しました。そして、3ヶ月の滞在を通じ、大阪の街の風景を素材に作品を制作、発表します。
番組は、滞在制作、展覧会の様子と、展覧会オープニングをむかえた彼にインタビューするという流れになっています。
まず、レジデンス中の拠点となっているスペースで、どんな作品をつくろうとしているのか話を聞いたあと、実際にやってみる?ということで、日が暮れた街に繰り出します。
街で建物やシャッターに投影をするにあたり、場所の交渉をヴァディム自身がおこないます。あるお店に、プロジェクターの電源を借りようと交渉するも、OKをもらえなかったり、実験の場所が見つかったと思えば、今度はスライドプロジェクターの調子が悪くなったりと、いろいろあります。その後、無事にプロジェクターの機嫌がなおり、やっと実験にうつります。リサーチで撮りためたスライドフィルムがたくさん収められているファイルをめくって、アイデアに見合うイメージを探します。
例えば、ビルのシャッターに、1台のプロジェクターから台所が、もう1台のプロジェクターからは和室が、というような、日常の風景が映し出されます。シャッターに投影された像のうえに、人や自転車の影も重なり、イメージは変化していきます。
その後番組は、公開制作の様子、展覧会へと続き、オープニングで行われたパフォーマンスを終えたヴァディムにインタビューをして終わります。
インタビューより
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Q.3ヶ月の滞在制作はどうでしたか?
最初の1ヶ月というのは、コミニュケーションをとること自体が課題でした。
私にとってコミュニケーションとは、あらゆるものとコミュニケートすることです。
Q.滞在制作を終えて、展覧会を迎えた今の気持ちは?
いろいろなコミュニケーションが持てたので、すごくうれしく思っています。
今の状況はとても幸福だと思います。
みんなコミュニケーションを持とうとしてくれたからです
日本での展覧会の場合、来場者はすごくシャイだと聞いていたのですが、
実際にはみんなすごく関心を持って話しかけてくれました。
ライトの中とかにみんな絶対入ってこないと思っていたけれど、
いろいろ見に来てくれてすごく満足に思っています。
ヨーロッパでもそうですが、日本でこのような野外パフォーマンスの許可を
得る事は、すごく大変だと思います。
日本でどういう法律があるのか解らない中でも、
アートではこういうことがしたいと思ったら、
やれるということがわかった。
そういう経験がよかったです。
さっきのラインティングのパフォーマンスにしても
とりたてて特別なものではないと思います。
あれがアートなのかどうなのかっていうのは
みる人によっても、状況によっても変わるだろうし。
そのような視点を発見するということが面白いと感じるのです。
昔から、様々な自然科学であったり、歴史的な技術であったり、
世界というもの自体が同じようなことだと思うのです。
光のあて方によって、見え方が変わる。そういう機会をつくりたいのです。
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