Vol.016(2005年5月16日〜31日)
労働と音楽
音楽社会 ♣番組レビュー築港赤レンガ倉庫(大阪)で行われた労働と音楽の妙なカップリングを取材(NPO法人大阪アーツアポリア「サウンドアート・プログラム 近未来系築港赤レンガ倉庫vol.5」より)。
取材協力:NPO法人大阪アーツアポリア
ディレクション/編集/撮影:甲斐賢治
撮影:那須野浄邦
サウンドアート・プログラム 近未来系築港赤レンガ倉庫vol.5
労働と音楽
出演:建築作業 >>木村ふみのり(維新派)、白藤垂人( hitori工務店)、豊川 忠宏(豊川木工)
岡博史(インパクトドライブ)、井上憲次(ラチェット大阪)、金城恒次
(ラチェット大阪)、羽柴英明(九或九)
演奏 >>PsyEx、宇治野宗輝、ドラびでお(一楽儀光/伊藤隆之)、山川冬樹&mamieMU
開催日:2005年3月27日
会場:大阪築港・赤レンガ倉庫
サウンドアートスタジオ(通年非公開)
主催:大阪市、財団法人大阪年協会
運営:NPO法人大阪アーツアポリア
企画:大阪市アーツアポリア事業サウンドアートプログラム
音響:工藤聡史(ONE VOICE)
【番組レビュー】
この番組は、2005年に大阪のケーブルテレビで放送したものです。現在は公開されていないので、どんな番組であったか簡単に紹介したいと思います。
大阪市港区の築港赤レンガ倉庫にて、NPO法人大阪アーツアポリアが催す現代音楽イベント[近未来系築港赤レンガ倉庫vol.5-労働と音楽]を取材したものです。
この催しは「聴覚メディアと他メディアの対決」をコンセプトに、新鮮な感覚で音楽と出会う場となるよう進められているプロジェクトです。今回の対戦相手は「労働」ということで、番組ではこの催しの流れを追った構成になっています。
番組は、受付をすませたお客さんが、それぞれ座布団を持って会場に入っていく様子から始まります。
会場は、元倉庫のまま、いわゆるステージや固定席のないフラットな状態です。そこに、倉庫扉が開き「ピーピーピー・・・バックします」という音声とともにトラックの搬入で、イベントがスタートします。
番組では、psysExさんのラップトップの演奏とともに、トラックから木材が下されてて建築作業が進められていく映像が流れます。
音は、会場の音そのまま(演奏と作業音が同時に聞こえる)のところと、演奏がメイン、建築作業の音がメインで聞こえてくるシーンがあります。psysExさんも建築作業も、お互いなんらかの影響しあっているのでしょうか。それぞれ黙々と進められていくように見受けられます。
建築チームは、7名で、それぞれ木材の移動、電ノコでカット、床を図ってチョークで印をつけていく人と、それぞれが動いています。
そして、宇治野宗輝さんの演奏に移ります。ターンテーブル、ジュースミキサー、電動ドリルなどのモーターが繋がられ、ビートが刻まれていきます。そのうち建築作業はすすみ、 釘打ちの音も加わります。この時点では、建築チームが何を作ろうとしているのかは、わかりません。パーツが組み合わさって、梯子状のものが出来てきているようです。
そして、ドラムセットをビデオデッキとして使用し映像をコントロールしているドラびでおの演奏がはじまりました。ドラムの演奏にあわせて、会場のスクリーンには、進行中の建築作業のいくつかのシーンと、雑誌(?)写真が映し出されます。
しばらくすると、ディレクターの小島剛さんにこのイベントについてのインタビューが挟まれます。
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あまり難しく考えなくてよくて、テレビの音を消しながら音楽を聴いている状況が近い。それはたぶん、くだらないドラマとか単なる野球の外野フライが、その音楽によってなにか妙にそこだけが劇的に見えたりとか、なにかスーパープレイのように見えるという。その体験というのはどこにあるのかと思ったら、ストーリーを追ってたりとか、その文脈を 前後からきちんと理解しながら見ている。一方で、音っていうのは勝手に入ってくる。そうすると、その二つが交わって邪魔だと思うんじゃなくて、そこは急にドラマティックになってたりするという、それぞれのイメージがなんかこう。。。。倍になって[メディア]として、届いてくるという、そのおもしろさというのは何を当てはめてもあるんじゃないか...
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そして、イベントのシーンに戻り、山川冬樹さんのホーメイと胡弓(?)の演奏と、mamieMUによるテルミンの演奏が始まります。建築作業チームは、梯子状だったものが組み立てられて、八角形の塔というか、やぐらのようなものが立ち上がります。なかなか高いやぐらで、倉庫天井近くまでありそうです。ホーメイとテルミンの音や暗めの会場が、なんだかこのやぐらが神秘的なもののようにみえてきます。建築チームは、作業中に出た木くずや、木の粉を掃いている様をみていて、勝手に掃き清められていくようで、ますますやぐらに、いろんな意味を足してしまいます。掃除後、トラックに乗って搬出が終わり、イベントは終了。番組は築港赤レンガ倉庫の風景で締めくくられます。