【関連リンク】

・トナリノマド（神戸アートアニュアル2004）
　http://kavc.or.jp/art/annual/04/

【番組レビュー】

コネクタテレビ最初期にCATVで放送された番組のひとつで、持ち込みによる番組としてもVol.003（2004年11月1日～15日）「かえっこ：kaekko」に次ぐ２件目の番組ですね。ほぼ10年という時間が経った今、この番組は逆にとても新鮮です。

持ち込みのきっかけは当時IMIという大学院大学の専攻生だった阿部くんにスタッフ側から声をかけたのが始まりでした。阿部くんは早速友達を誘っていろいろ相談してみてくれたようです。取材をしたことは勿論ない、カメラも持っていない。そんな3人が集まって企画会議に提案してくれたのは、神戸の新開地にある神戸アートビレッッジセンターでの「神戸アートアニュアル」という展覧会を紹介する企画でした。新人アーティストに声をかけ、集まったアーティストたちが主体となって展覧会の企画制作を進めていくというアートビレッジの企画展です。阿部くんに声をかけられた渡辺さんが、この展覧会にスタッフとして参加していたのです。

番組冒頭では渡辺さん自身が登場してナレーションしています。当時9年目を迎えたアートアニュアル、搬入の様子を映像で伝え、企画趣旨を簡潔に紹介しています。この場面でたくさんの美術作家が集まってみんなで展覧会の設営作業をしている様子は、展覧企画と番組の企画がうまく重なり合って印象的な風景でした。彼らがつけた番組タイトル「鍛える展覧会」は、これから始まる番組を、どのような視点で観ていくかを表明しています。

おそらく渡辺さんはインターンスタッフとして展覧会の準備をしながら、観察者としては一定の距離を保ちコネクタテレビの視聴者にどのように伝えるかを考えていたと思います。作家はもちろん、当時アートビレッジの担当者だった木ノ下智恵子さん、編集者の沢田眉香子さん、フリーキュレイターの加藤義夫さん、そして地元の商店街の方など、取材して声を聴いていった人選も、視聴者に分かりやすく且つ的を射たコメントが出ていて番組を前に進めていきます。

10年経った今、この展覧会の事業が、アーティストたち、スタッフの人達、観に来ていた人達を媒介に社会の中で様々な形で生き続けていると感じられました。現在あるあそこのあの活動、あの作家、このアートスペース、、、今日目にするいろいろな出来事と、繋がる出来事がこんな所にもあったのだ、という感覚と、その10年前の出来事をその時点の番組制作者の目を通して人や場所などの広がりを持って知ることができるというのは、頭ではわかっていても、かなり立体的で有機的、そして刺激的な体験です。この12分37秒の映像は、観る人ごとに様々なことを語りかけることになりそうです。